通じた喜びを思い出す
- 2009.09.18 Friday
- 10:37
By宮元友之
サイマル・アカデミー、とりわけ通訳者養成コースに通っている皆さんの外国語運用能力は、総じてかなりのレベルにあると思います。さて、外国語の勉強が一番楽しいのは、習った言語を初めて使って意思が通じた初学者の頃でしょう。ところが、この「通じて嬉しい!」という気持ち、自分の外国語能力が上がるにつれて、なぜか忘れてしまうものではないでしょうか。
これは考えれば当然のことで、鉄棒で逆上がりが初めてできた瞬間の喜び、自転車を補助輪なしで乗れたときの達成感といったものは、できることが当たり前になってしまえば、初めの感動は過去の記憶の奥深くへとしまい込まれてしまいます。逆に、さらに学習が進むと能力の向上は停滞し、乗り越えられない壁のようなものにつきあたると、もうこれ以上はいいやと思ってしまったり・・・。現状に満足する心と伸び悩みの狭間でモチベーションが低下してしまうのは、語学学習に限らず見られる現象なのかもしれません。
そこで、何が必要なのでしょうか。やはり、通じて嬉しい!という最初の喜び、つまり「できなかったことができるようになる感動」を自分で創りだしていく工夫なのではないかと思うのです。その意味で、語学学習や通訳学習は、創造的であり、能動的であるべきでしょう。
私自身も含めて、殆ど全ての外国語学習者、通訳者は発展途上人だと思います。もう一度、自分の目指すところを確認する。目標と対策を考え、創意工夫して実行に移していく。こうしてできなかったことが、一つ一つ喜びを伴ってできるようになるプロセスを創りだすことこそ、本当の意味で「学習」と呼ぶのではないでしょうか。自戒もこめて、「初めて通じた喜び」を忘れないようにしたいものです。
宮元友之 サイマル・アカデミー 大阪校通訳コース講師
立命館大学国際関係学部卒業。Temple University Master of Science in Education修了。
外資系企業にて国際ビジネスに携わった後、フリーの会議通訳者・大学講師に。
「楽しく・厳しく」をモットーに、第二言語習得論の知見を取り入れた授業を展開中。
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