他人事の話
- 2009.08.25 Tuesday
- 12:05
BY三木俊哉
問題です。「他人事」と書いてなんと読みますか?
最近、テレビやラジオでは「たにんごと」という発音?がよく聞かれる。アナウンサーもタレントも区別なくそう言っている気がする。個人的には「たにんごと」と聞くたびに少し違和感をおぼえる。私はどうやら「ひとごと」派らしい。「ひとごとじゃないぞ」と脅されたら身も引き締まるけれど、「たにんごとじゃないぞ」と言われてもあまり引き締まらない。
調べてみたら、ちゃんと議論があるようだ。
《もともと「他人(たにん)のこと」を意味する語・ことばには「ひとごと」という言い方しかなく、この語に戦前の辞書は「人事」という漢字を主にあてていた。ところが「人事」は「じんじ」と区別できないので「他人事」という書き方が支持されるようになり、これを誤って読んだものが「たにんごと」である》(NHK放送文化研究所のHPより)
なんだか納得。「ひとのことはほっといてくれ」という話し言葉を書き言葉にするとき、「人のことはほっといてくれ」とするのに微妙なためらいを感じるのは、これに通じるのではあるまいか。かといって「他人のことは」と書くのも、そのまま「ひとのことは」と書くのもしっくりこない。厄介ですね。
ついでになんの脈絡もなく思い出したのだが、「人気のない公園」というのも厄介といえば厄介だ。「にんき」なのか、それとも「ひとけ」なのか? まあ、厄介だからこそおもしろいのかもしれません、何ごとも。
プロフィール
三木俊哉 サイマル・アカデミー 英語翻訳者養成コース講師
企業勤務を経て、主に産業翻訳(英日・日英)に従事。
訳書に『スティーブ・ジョブズの流儀』、『強い会社は「周辺視野」が広い』、
『完全網羅 起業成功マニュアル』など。
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