ことばの官僚度

  • 2010.11.05 Friday
  • 18:12
 

官僚的なことばづかいというのがあるとすれば、それは――?

 

イアン・アーシーという翻訳者が日本語の官僚コトバの代表に挙げていたのが「整備」である(『政・官・財の日本語塾』)。役所の文書を英語に直すとき、この「整備」というのが頻発して困るらしい。なるほど。システムの整備、環境の整備、公園の整備……何をいつどこまでやるのか、これだけじゃよくわからない。

 

会社勤めをしていたころ、事業の企画書なるものに散見された表現が「醸成」や「深化」である。意欲の醸成、価値提供の深化。さきの整備と同じで、これもやはり意味不明。「現状維持」の言い換えともとれる。身に覚えはないものの、私だって使ったことがないとは断言できない。

 

裁判所の判決文なんかどうだろうと思ったら、意外とひどくない。美文ではないが、結論を導くための文章なので、そういう気持ちがまあ汲み取れなくはない。むしろ気の毒なのは、裁判ではふつう冒頭に有罪・無罪の結論が言い渡されるので、テレビなどではそこだけが即座に報道され、あとは突き放すように「判決理由の読み上げがまだ続いています」と言われることだ。

 

英語だって官僚の魔の手と無縁ではない。たとえば国連の決議文などを見ていると、なんだか肩が凝ってくる。とっても回りくどい。Scale of assessments for the apportionment of the expenses of the United Nations: requests under Article 19 of the Charterというのは、たまたま見つけたトピック名で、文章ではないが、にしてもこの前置詞の多さだけで私はぐったりしてしまう。

 

――最後に、私が官僚文の対極として?愛でている次の文章を引かせていただきたく。いわば本のはしがきです。

 

「このあひゞきは先年佛蘭西で死去した、露國では有名な小説家、ツルゲーネフといふ人の端物の作です。今度富先生の御依鬚伯してみました。私の譯文は我ながら不思議とソノ何んだが、これでも原文は極めて面白いです」(二葉亭四迷)

 

プロフィール

三木俊哉 サイマル・アカデミー 英語翻訳者養成コース講師

企業勤務を経て、主に産業翻訳(英日・日英)に従事。

訳書に『アル・ゴアからのメッセージ』、『完全網羅 起業成功マニュアル』

『スティーブ・ジョブズの流儀』など。

 

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