FPCJ プレス・ブリーフィング見学レポート(2017年11月30日実施)

  • 2019.03.19 Tuesday
  • 12:31

サイマル・アカデミーでは、在籍生を対象に「FPCJ プレス・ブリーフィング」見学のご案内をしています。


「FPCJ」とは、「公益財団法人フォーリン・プレス・センター・ジャパン」のことで、日本に駐在している海外メディアの方を対象に、現在の日本の重要なテーマについて説明するプレス・ブリーフィングを行っています。

 

見学は通常、FPCJ扶助会員および大使館員に限定されていますが、サイマル・インターナショナルの通訳者が担当する会見については、アカデミー受講生の見学もさせていただけることになっています。

今回は、スタッフが見学をさせていただきましたので、その様子をレポートいたします♪

 

* * *

今回のテーマは「空き家対策の現状と課題」についてです。

難しいテーマですが、所有者不明の空き家がそのままになっていたり、建て替えや取り壊しにもお金がかかるため、そのまま放置されている空き家が増えていると聞いたことがあります。受付で資料を受け取り、さっそく会場へ。

海外メディア向けということで、やはり海外の方がほとんどのようですが、日本人の方もいらっしゃいました。30〜40名くらい集まっていたかと思います。今回は、日本語スピーカーなので、日英の逐次通訳が入ります。

 

時間になり、スピーカーの富士通総研 経済研究所 主席研究員 米山秀隆氏が登場しました。
そして、本日の通訳者、長井鞠子先生も一緒に登場です!実は、通訳者が誰なのかはこの時まで分からなかったのですが、長井先生が現れてびっくり! 

 

長井先生と言えば、サイマルの顧問であり、サミットやオリンピック招致等、重要案件も数多く担当している、現在の日本でもトップ通訳者と言われる一人です。NHK「プロフェッショナル〜仕事の流儀〜」などのTV番組や雑誌で紹介されたり、講演会なども行っているので、ご存知の方も多いかもしれませんね。

 

実は社員の私も、普段はなかなかお会いすることができないため、とてもラッキーだったと思います。「こんな目の前で直接、長井先生の通訳を聞けるとはーーー!」心の中で、一人でテンション上がってました(笑) 


さて、長井先生の通訳はと言うと、さすがに分かりやすく簡潔な通訳で、とても聞きやすかったです。スピーカーの話を聞きながら「うんうん」とうなずき、言葉を確認しているように見えました。
また、事前資料がしっかり出されていたようで、メモを取るというよりは、資料にマルをつけたり、線を引いたりしているように見受けられましたので、おそらく数字やキーワードとなる単語だけを資料の上でチェックし、 文章自体はほとんどリテンションされていたのではないでしょうか。

                    

また、スピーカーの言葉をそのまま訳すのではなく、補足したり、言い直したりすることで、とても分かりやすく説明されていました。
例えば、「水まわり」という一言でまとめられた日本語は、「kitchen, toilet, bathroom area」と具体的な場所を示していましたし、また、「善光寺」という地名が出てきたときには、「famous temple, very popular for the tourists」と、なじみのない外国人にも分かるように言葉を添えていました。


また、「MYROOM」という企業名が出てきたのですが、このときは、「the name of the company」と説明を加えていました。
確かに、普通に聞いていたら、「なぜここで“私の部屋”?」となってしまいますよね。そういう細かいところにも気をつけて通訳しているのですね。通訳が単に直訳ではなく、「しっかりと意味を考えて、メッセージを伝えることが重要」と言われている所以を実感しました。さすがです!! 

 

QAセッションでは、

「相続で空き家を所有した人が、居住もせず、取り壊しもせず、何もしないのはなぜなのか?」

「日本にはもったいない精神があり、物を大切にする文化があるのに、なぜ家は数十年単位で建て替えるのか?」

「中古での売買をもっと活用すればいいのでは?」等、

海外の方ならではの視点による質問が多くありました。

 

私も聞いていて、なるほど、と納得したのですが、日本特有の文化や考え方についても、理解を深めることが、通訳をする際にも役立つのだと思いました。

 

通訳者は誰になるかは当日まで分かりませんが、サイマルのトップ通訳者が実際に目の前で通訳するのを見ることのできる、貴重な機会です。今後も、随時募集をしておりますので、ご都合が合う日程がありましたら、ぜひご参加ください!
勉強にもなりますし、きっとモチベーションも上がると思いますよ♪

 

★当時の様子はFPCJのウェブサイトでもご覧いただけます。

2018年8月26日開催 英語「通訳者への道」アフターレポート

  • 2019.02.01 Friday
  • 11:10

8月26日(日)に開催された「通訳者・翻訳者への道」。第2部は、サイマル・アカデミーの講師も務める有田勇一郎さんをお迎えして「駆け出し通訳者としての喜びと課題」と題し、通訳の魅力や現場での課題についてお話いただきました。

 

第2部 「通訳者への道」

 

講師:有田 勇一郎 


ありた・ゆういちろう 小学校と高校の後半をアメリカで過ごす。米ジョージタウン大学卒。帰国後、外資系企業に20年勤務。2014年10月よりサイマル・アカデミーで通訳訓練を始め、2016年10月にフリーランス通訳者となる。現在、サイマル・アカデミーの「通訳準備」クラスを担当。

 

 

●50代で通訳者に転身


52歳で外資系企業のサラリーマンからフリーランス通訳者へ転職された有田さん。安定した生活から突如、それまでのポジションが無くなるという「リストラ」の憂き目に遭われたのです!急に職を失い今後のキャリアを模索していた中、得意の英語を活かした「通訳」の仕事に興味を持ち、サイマル・アカデミー通訳者養成コースに通学を始めました。

 

●サイマル・アカデミーでの学び


講師からは、現場での立ち振る舞い方や失敗談など、通訳スキル以外の事柄についても学んだという有田さん。クラスメイトとは、授業前に互いにリテンション(注)の練習をするなど交流を深め、それぞれが通訳デビューした今でも仕事の情報交換をしているそうです。このように、現場で役立つ実践力が身についたり、通訳者の仲間ができるのは、独学では得られない、学校に通うことのメリットではないでしょうか。

 

(注)リテンション:聞き取った情報を一定時間記憶し、聞いたとおりに繰り返す練習。語彙力・表現力の向上につながる。

 

●通訳の魅力は「世の中が広く見えてくる」こと


アカデミーを修了し、晴れてフリーの通訳者としてデビューされた有田さんですが、日々業務を続ける中で感じる、通訳の魅力についてお話くださいました。「その場でクライアントから感謝してもらえる」「組織に振り回されず自分の腕一本で勝負できる」「定年がない」などいくつか挙げられましたが、中でも印象に残ったのは「視野が広がり、世の中が広く見えてくる」という点です。

 

 

一つの業界で働いていたサラリーマン時代と異なり、通訳者は日々新しい業界、領域に関する案件に接します。そのため、準備のために常に勉強して、新しい知識を吸収していくことで、ご自身の視野が拡大し、日々成長しているのを感じるそうです。逆に見れば、通訳者はどれだけ語学が得意でも、多方面に興味・好奇心を持ち、学んでいくことを厭わない人でなければ向いていないと思いました。

 

●通訳者としての課題


まず健康管理について。万一体調不良で現場に行けなくなり案件に穴を上げてしまえば、クライアント、エージェントに迷惑をかけることになり、ひいては今後の仕事の依頼が無くなるということに繋がりかねません。その意味で、これまで以上に健康に気を遣うようになったそうです。

 

続けて、実際に通訳をしていて感じた点として、日本語と英語の言語構造や発想の違いによる訳出がいかに難しいかを、様々な例を挙げてお話くださいました。例えば「青信号」という日本語。これをそのまま「blue light」と訳しては通じません。正しくは「green light」ですね。どのような場面でも常に考えなくてはいけないのは「単語でなく、意味を訳す(=内容を伝える)」ことです。内容を聞いて、意味を理解して、頭の中で組み立て直してから訳す、この作業こそがプロの通訳者の腕の見せ所です。コミュニティの現場では機械翻訳やAIが力を発揮していますが、日本語と英語のニュアンスも踏まえて的確に訳出しなくてはいけない状況においては、生身の人間に敵わないのです。

 

●通訳者を目指す方へ有田さんからのメッセージ


英語が得意だからと言うだけでは通訳者の仕事は務まらず、学校に通って専門訓練を受けることが重要です。学校に通った上で、さらに日々練習を積み重ねることが大切です。毎日数分でもいいのでコツコツトとトレーニングを続けることが、通訳者としてのパフォーマンスを強化する方法だと思います。数年後、皆さんと通訳の仕事現場で再会できることを楽しみにしています。

 

 

駆け出し通訳者」として日々尽力されている有田さん。サラリーマン時代が長かったからこそ、その経験が現在のフリーランス通訳者としての仕事にも活かされているのかも知れません。多くの皆様、ご参加ありがとうございました。

 

2018年8月26日開催 英語「翻訳者への道」アフターレポート

  • 2019.02.01 Friday
  • 10:30

2018年8月26日(日)に開催した「通訳者への道 翻訳者への道」のアフターレポートをご紹介します。第1部は、サイマル・インターナショナルでインハウス(社内)翻訳者をされている杉山一樹さんの講演でした。タイトルは「人間翻訳の実務!一体どんな内容なのか気になるタイトルですよね。以下、講演の内容の一部をお伝えします。

 

第1部 英語 「翻訳者への道」


講師:杉山一樹


〇すぎやま・かずき 一橋大学経済学部卒業、上智大学大学院外国語学研究科修士課程卒業。東京銀行(現・三菱UFJ銀行)で資産運用業務、ドイツ銀行で証券保管業務、ステート・ストリート信託銀行で受託資産管理業務に従事。サイマル・アカデミー受講を経て実務翻訳者に転じた後、サイマル・インターナショナルのインハウス校閲・翻訳を担当。

 

 

★日本は珍訳大国!?


講演の冒頭では杉山さんから、公共の場所や日々のチェック(校閲)で遭遇した珍訳についてご紹介いただきました。例えば、体力作りのための「トレーニングセンター」の英訳が「training center」になっていたという例。一見するときちんと訳されているようですが、「training center」と訳すと意味は「会社の研修所」になってしまいます。この場合の正しい訳は「fitness center」です。

 

正しいように見えても実は全然違う意味になってしまう珍訳が、意外と身の回りに多くあります。翻訳は、単語を訳しただけでは本当の翻訳にはなりません。ただ単語を置き換えるのではなく、「著者の言いたいことを汲み取り、異なる言語で伝えること」が翻訳なのです。

 

 

★翻訳実務のキーポイント


日々チェッカーとして様々な訳文の校閲をされている杉山さん。難しい内容の文章に対し、訳文も難解になってしまっている例をよく見かけると言います。

難解な訳文は読み手にストレスを与えてしまうため、翻訳者は訳すだけではなく、読み手の立場になって訳文を考えることが大切。また、翻訳の作業を始める前に訳文の想定読者を確認し、訳文の文章の堅さや丁寧さを統一するなど、一見「当たり前」のことをきちんと確認することや、納品前にWordのスペルチェックや読み上げ機能を使用するなど、チェックに回す前に今一度自分の訳文の見直しをすることもとても大事です。

 

翻訳という仕事には、翻訳を始める前から納品をするまでの確認事項が多く存在します。翻訳はサービス業であるからこそ、こういった一つ一つのステップを踏み、訳文のクオリティを上げていくことが重要なのです。

 

 

講演を聞いて印象的だったのは、杉山さんが「翻訳は怖いものだ」とお話しされていたことです。チェッカーを担当していると「致命的な誤訳」に遭遇することもごく稀にあるそうで、誤訳に気づいて「お客様に訳文が届く前に気が付くことができて良かった!」と思うと同時に、「もし気が付けていなかったら、クライアントとの関係はどうなっていたのだろう…」とゾッとすると杉山さんは言います。翻訳は、翻訳者が訳しただけでは終わらず、チェッカーの校閲を経てはじめて納品されます。今回杉山さんのお話をお伺いし、チェッカーという役割の重みを改めて実感したセミナーとなりました。

 

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最後にQ&Aでいただいた翻訳の勉強に関する質問と、杉山さんの回答をいくつかご紹介します。

 

Q.翻訳者としてやっておくべき勉強法はありますか?

A.翻訳者として「これを勉強した方が良い」ということは特にないのですが、新聞を読むことをおすすめします。新聞のライターの方は日本語のプロなので、プロの文章から日本語を学べますし、日々新出する単語も学ぶことができます。実務翻訳に限らず、翻訳に携わる全ての方におすすめです。

 

Q.翻訳者になるために講座に参加するだけでは、勉強量が足りないと思いますが、自分でどのように勉強すればいいでしょうか?

A.例えばサイマル・アカデミーの場合、宿題がとても多く出ます。予習と復習が必要ですが、これだけでも膨大な作業量になります。平日にお仕事をされている方だと、土日のどちらかは、かかりきりになる量かもしれません。ですので授業に参加し、一生懸命予習・復習をすることで、十分な勉強量になると思いますよ。

 

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ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!

 

 

サイマル修了生 森田さんの翻訳書が出版されました!

  • 2018.10.10 Wednesday
  • 16:41

サイマル・アカデミー翻訳者養成コース 出版翻訳を修了された森田和子さんの翻訳書「サノクス令夫人 コナン・ドイル・ストーリーズ2」が出版されました!

初めての単独本出版に際し、大変だったことや授業で役立ったことなどエピソードを教えてもらいました♪

 

 

〜〜森田さんからのメッセージ〜〜

 

シャーロック・ホームズシリーズで知られるコナン・ドイルは、他にも多くの著作があり、その中から「恐怖」にスポットを当てて選んだ短編集が、今回の作品です。現代風に言えばSFや超常現象、人間の心の奥底に潜む魔物などを描いた6編からなり、以前にも訳されたことのある復刻版です。
今から100年ほど前に書かれた作品のため、英文が古風で少々まわりくどく、読解にかなり苦労しました。また、若い読者にも抵抗なく読んでいただける現代的な日本語を使いながら、当時の雰囲気が出るような訳文を心掛けたのですが、なかなか難しかったです。
わたしはとりたてて英語が得意なわけでもなく、サイマルで翻訳の勉強を始めるまで英文の原書を1冊も読み通したことがなかったのですが、先生方の熱心なご指導とクラスの楽しい雰囲気に惹かれて、学習を続けることができました。中でも、事前に提出した課題を先生方が懇切丁寧に添削してくださり、誤訳の訂正はもちろん、生徒の訳を生かしつつより良い日本語に直してくださったのが、大変勉強になりました。また、主にインターネットを利用した様々なリサーチのテクニックを教えていただいたのも、とても役に立ちました。
本1冊を訳すといっても、翻訳そのものはクラスの課題の延長だと思いますが、大きく違うのは訳す量です。この作品は決して長くないとはいえ、課題で訳す分量よりはるかに多く、自分で決めたノルマを毎日きちんと訳していくのが大変だったというのが、正直な気持ちです。
今回、運よくこのような作品を訳す機会が与えられ、無事に訳し終えることができたのは、先生方に翻訳の「いろは」から教えていただき、同じ間違いを何度繰り返しても根気よくご指導くださったおかげです。この場を借りて、あらためてお礼申し上げます。

 

 

人間にとって最も恐ろしい存在は、人間自身にほかならない。
名探偵シャーロック・ホームズの生みの親、コナン・ドイル。

晩年に自ら編みなおした短編集『コナン・ ドイル・ストーリーズ』より、

恐怖を題材にした6短編を収録。
人間心理に通暁しているドイルの手にかかると、

恐怖小説は単なる恐~い物語ではすまなくなる。
 

 

 

森田和子

サノクス令夫人 コナン・ドイル・ストーリーズ2

柏艪舎


【プロフィール】
慶応義塾大学文学部独文学科卒業。銀行勤務、日本語学校講師を経て、翻訳の勉強を始める。
インターカレッジ札幌第5回翻訳コンクール、最優秀賞受賞。本書が初の単独翻訳出版。
2010年サイマル・アカデミー出版翻訳コースワークショップを修了。

通訳コース受講生特別セミナー「ここでしか聞けない!通訳の舞台裏」アフターレポート

  • 2018.08.28 Tuesday
  • 10:53

先日、井戸先生をスピーカーにお招きし、通訳コース受講生特別セミナー「ここでしか聞けない!通訳の舞台裏」を開催しました。
定員を上回るたくさんのお申込をいただき、ありがとうございました。抽選にもれてしまった方、ごめんなさい!
当日のセミナーの様子を少しご紹介します。

 

 

【通訳者になるまで】
井戸先生が大学生だった頃は、超氷河期と言われた時代で、就職がなかなか決まらなかったそうです。
もともと通訳者を目指していたというよりは「英語ができる」ということで、何か英語を生かせる仕事ができればいいな、と考え、アカデミーの門を叩いたのが始まり。
就職した会社は1年ほどで退職し、アカデミーに在籍しながら、知人の紹介で社内通訳のお仕事を始めたそうです。
在籍中には、長野オリンピックなどがあり、「この日空いてる人―?」という感じで、通訳現場のお仕事を体験する機会もあったそうです。
そして、アカデミーの修了オーディション

(※会議通訳兇僚の札謄好箸魯ーディション形式。講師だけでなく、アカデミースタッフ、サイマル・インターナショナル関連部門からの担当者がズラーッと並んだ前で同時通訳をします。かなりの緊張です!)
ちなみにこの時、井戸先生の修了オーディションの採点を担当したのは小松達也先生と長部三郎先生だったそうです。

 

今、振り返ってみると「サイマルを卒業した」という、いわゆる「サイマル・ブランド」は自信を持っていいところだとおっしゃいます。
サイマルは他社に比べ、たしかに評価が厳しいですが、それはクオリティを重視しているから。
基礎を大切にし、レベルに達していなければ進級はできません。
それは、業界でも知られているところであり、「サイマルで勉強した」と言うと、クライアントからの信頼も厚いそうです。

 

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一方で、通訳という仕事は世の中の動きに左右される職業です。
9.11やSARSなどの大きな事件があった時には仕事が減少。ですが、落ち着くとまた需要も増えてくるので、仕事がない時期にも腐らず自分の力を蓄え、ブラッシュアップしておくことが必要。
需要が再開したときに、商品としての自分を生かしてもらえるよう、努力を怠らないことが大事です。

 

 

【1週間のスケジュール】
さて、井戸先生と言えば、通訳者であり、アカデミー講師でもあり、さらにプライベートではお二人のお子様のお母さん。そのパワフルさには頭が下がりますが、同じ24時間しかないはずなのに、いったいどんな生活を送っていらっしゃるのか・・・と興味のある方も多いと思います。
今回は、ある1週間のスケジュールをご紹介いただきました。

 

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それによると、お仕事の合間を縫って、お子様の学校行事に参加したり、ご自分の健康維持のためにテニススクールに通っていたりすることが判明!
時間をうまく使って、お仕事の事前準備をしたり、アカデミーの授業の準備をしたり、家事をしたりしているんですね。
もちろん、それにはご家族の協力が不可欠。ココだけの話、ダンナ様の家事力が著しく向上したそうです(笑)。
ちなみにダンナ様も同じく通訳者であり、お仕事のスケジュールは早い者勝ちで入れていくそうです。
どちらかがお仕事、どちらかがお家でお子様の面倒を見る、というように分担しているそうです。

 

 

【こんなときどうする?】
事前質問でもあったのが、「アクセントのキツイスピーカーなど、聞き取れなかったらどうする?」という質問。
まずは、「自分が聞きづらい」ということは「他の人も聞きづらい」のだと割り切ること。
分からなかったら聞き直す
あいまいなまま進めると、クライアントの信用が下がってしまう危険があり、ちゃんと食い下がることが大事だそうです。
また、事前準備をしっかりしておくこと、背景知識を付けることで、話の内容を推測することができます。
あきらめて、他人事にしてしまうのがいちばんいけないのだそうです。
実際の現場では「だって分からなかったんだもん」では通用しません!

 

また、日頃からの健康管理が大事なのは言うまでもありませんが、どうしても病気になってしまったり、ご家庭の事情で、どうしても対応できないという場合は、エージェントに連絡して、ピンチヒッターを依頼することもあるそうです。
ただ、逆の場合、誰かがダウンして、急遽ピンチヒッターが必要になったときには、できるだけすすんで引き受けるようにしているとのこと。
これは、通訳者の方、皆さんそうだと思いますが、持ちつ持たれつですね。

 

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【準備のススメ】
事前資料を準備することはもちろんですが、実際にどんなふうに準備しているのか皆さん、興味津々!
単語を調べたり、背景知識をつけることはもちろんですが、井戸先生のオススメは、スクリプトがある場合、声に出して音読すること。
自分で発声してみて初めて、文章の切れ目に気づくことなどもあるそうです。
また、あせってたくさんメモを取るよりは、落ち着いて、しっかり音を聞くことで、全体像をつかむことができるのだとか。

 

 

【客観的な視点を持つ】
商品として自分が選ばれなかったとき、また現場でうまくできなかったときはショックですが、落ち込んでも仕方ありません。そして、言い訳しても意味がありません。
講師や先輩通訳者から指摘を受けた場合は、言い訳や泣き言は言わず、しっかり受け止めること。
言われるにはやはりそれなりの理由があるわけで、指摘を受けたというのは裏を返せば改善するチャンスです。
アカデミーでは通訳機Ν兇任牢霑知習などがありますので、まずはそれをしっかりやり、講師からのアドバイスには真摯に耳を傾けること。
そしてレベルが上がっていくにしたがって、弱点は自分自身で気づかなければいけないものとなっていきます。
常に自分で振り返り、反省し、改善する。それこそが上達のコツだということですね。

 

 

【最後に・・・】
出産・育児・介護など、いろいろな人生の節目に当たったとき、どうするかは自分の選択です。
家族第一はもちろんですが、もしタイミングをコントロールできるのであれば、自分のがんばり時を見極め、調節する方がいい場合もあります。
ただ、第一線を離れたとしても、戻る気があるのであれば、戻ることは可能。
その場合、エージェントとコンタクトを切らさないようにする、自分のアベイラビリティをアピールすることなどが大事だそうです。

今回は、国会図書館の案件で使用した事前資料やいつも持ち歩いている通訳機材なども披露してくださり、皆さん、興味深く見ていらっしゃいました。

 

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実際にご活躍されている井戸先生ならではの貴重なお話をお伺いすることができ、大成功のセミナーとなりました。
ご参加いただきました皆さんにもご満足いただけたようです。

今後も同様のセミナーを企画してまいりますので、お楽しみに!

 

★サイマル・アカデミー 通訳者養成コースについて

★井戸先生が講師を務める「通訳者が教える英語力アップ講座」はこちらから!

サイマル修了生 長田さんの翻訳書が出版されました!

  • 2018.07.31 Tuesday
  • 13:22

サイマル・アカデミー翻訳者養成コース産業英日、出版英日の受講生、長田 綾佳さんの翻訳本、

『藤本壮介 建築作品集』『名作モダン建築の解剖図鑑』が出版されました!!
初めての分野の翻訳にどのように取り組まれたか伺いましたJ

 

★★長田さんからメッセージ★☆

 

このたび、『藤本壮介 建築作品集』『名作モダン建築の解剖図鑑』の2冊を翻訳させていただきました。

『藤本壮介〜』は、国内外で大活躍中の建築家、藤本壮介氏のプロジェクトを写真や図面などで紹介する作品集です。

オーディションを経て、まずこちらの本の翻訳をさせていただきました。もともと建築に興味はありましたが、専門的な勉強をしたことも仕事で関わったこともなかったので、リサーチには相当時間をかけました。関連書や用語集を読み込み、見に行ける建物には実際に足を運びました。文字情報だけでなく写真や図なども参照して内容の裏を取りながら翻訳を進めました。感情表現などは少なくシンプルな文が多かったため、そういう意味では初めてのお仕事として本書の翻訳の機会をいただけたのはとても恵まれていたなと感じます。

『名作モダン建築〜』は、1950年以降の世界中の名作建築をイラストで解説している本です。『藤本壮介〜』の翻訳作業後にこちらのお仕事をいただきました。担当の編集者さんが1冊目とは別の方だったので、文体や言葉遣いのリクエストもまったく異なり、また違った難しさがありました。

サイマルの翻訳講座で学んだことの中で特に印象に残っているのは、自分の訳文を客観的に見ることの大切さです。見直しの期間を十分に取り、必ず一定期間訳文を寝かせてから再度読み直すよう先生方からアドバイスをいただきました。実際、自信満々で訳していた文章でも、時間を置いてから読むと誤訳や悪文が山ほど見つかり、愕然とすることが多々ありました。また、受講時に「文が冗長」と指摘を受けることも多かったので、無駄な要素を省いてシンプルな文を作るように心掛けました。

どちらの本も苦労しましたが、実物を手にしたときは感無量でした。学生の頃からの夢をかなえることができたのは、サイマルの先生方のご指導のおかげです。あらためて感謝いたします。講座受講生の方で建築にご興味がある方は、どこかで見かけたら手に取っていただけると幸いです。

 

藤本壮介 建築作品集

ナオミ・ポロック (著), 長田 綾佳 (翻訳)

藤本壮介氏の歩んできた道を紐解く、建築と藤本氏への著者の愛が溢れだす建築作品集!

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名作モダン建築の解剖図鑑 単行本

アントニー・ラッドフォード (著), セレン・モーコック (著),

アミット・スリヴァスタヴァ (著), 長田 綾佳 (翻訳)

世界の有名建築50作品を徹底図解!名作建築は、どのようにして生まれるのか。

1950 年代から現在までに建てられた、50 点に及ぶ世界中の現代建築の傑作を解剖する、野心あふれる1 冊。建築家、建築を学ぶ学生、すべての建築ファンにとって、未来へつながるヒントが詰まった必携書です。

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<長田さんプロフィール>
2015年にサイマル・アカデミーに入学し、翻訳者養成コース産業英日、出版英日を受講。

 

サイマル・アカデミー翻訳者養成コースについてはこちら!

 

 

2018年2月25日開催 英語「通訳者への道」アフターレポート

  • 2018.05.18 Friday
  • 13:52

2月25日(日)に行われた「通訳者・翻訳者への道」セミナー。第3部は、会議通訳者でありサイマル・アカデミーの講師も務める高畑美奈子先生が登壇されました。内容は、記憶に新しい平昌オリンピックでの通訳の仕事について。通訳者をめざす人にとっては関心の高い話題で、「オリンピックでの通訳に興味がある人パー」と呼び掛けると、参加者のうち約3分の1の手が挙がりました。ここでは当日の内容を一部紹介します。

 

第3部 英語「通訳者への道」

 

講師:高畑美奈子


○たかはた・みなこ 上智大学外国語学部英語学科卒業後、TBSに就職。報道および情報番組の記者として、外信部やNY支局勤務。退職後、サイマル・アカデミーを受講し卒業。現在フリーランスの通訳者。得意分野は外務省関連、労働関係、IR等。 

 

 

|「縁の下の力持ち」―オリンピックでの通訳の仕事について


オリンピックでの通訳の仕事というと、たとえば記者会見で有名選手の横について通訳をする姿を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。実際のところ、有名選手と仕事をする機会はほとんどないそうです。むしろそれ以外の大会準備や大会期間中の運営における通訳が多く、その部門はオリンピック全体で52種類にも及びます。たとえば、宿泊、放送サービス、交通、エネルギー、開閉会式、ドーピング検査、会場・インフラなど。通訳者はまさに競技の裏側を支える「縁の下の力持ち」といえます。

その各部門にて、会議(逐次通訳*/同時通訳*)や視察(ウィスパリング*/逐次通訳)、記者会見、レセプション、オブザーバープログラムなどの通訳を行います。今回の平昌オリンピックの期間中、高畑先生は現地でそのオブザーバープログラムの通訳に携わっていました。オブザーバープログラムとは、国際オリンピック委員会(IOC)が将来のオリンピック開催国や候補地の担当者に、その年の開催国が準備・運営している様子を実際に見てもらうプログラムです。

 

平昌オリンピックでのオブザーバープログラムは何か国もの担当者が同席することもあり、たとえば最初に韓国語→英語に訳し、それを別の通訳者が英語→日本語に訳すという「リレー通訳」の手法が用いられたそうです。屋内・屋外を問わない現場で、屋外の場合は川が凍るほどの寒さ。上下とも十分に着込み、聴診器のような形の簡易型通訳機材を使用しながら現地で奮闘する通訳者の方々の姿がスライドに映されていました。

 


 

 


*通訳の種類。たとえば「逐次通訳」は、話者がある程度まとめて話したものを整理して後から訳すこと。それぞれの通訳の種類について知りたい方はこちらをご覧ください。(サイマル・アカデミー コンテンツ「SIMUL CAFE」に移ります)

 

 

|日々の積み重ね


オリンピックでは、組織委員会から組織の名前やオリンピック独特の用語を説明した、100ページ近くにも及ぶ単語帳が通訳者に共有されるそうです。スポーツを始め、交通、エネルギー、医療など、部門の数だけジャンルも多岐に渡ります。にも関わらず、「たとえば来週どの分野を担当するのか、日にちが近付くまで分からない」ことに加え、「実際、その単語帳を持って会議に出席したとしても、その場で使うことはなかなか難しい」。それはあんまりでは、と思ってしまいますが、それでも最大限の準備をし、万全の態勢で臨むプロの仕事を痛感しました。

 

↑セミナー後に公開された、数十枚にも及ぶ高畑先生お手製の単語帳。

たくさんの参加者の方々が見て行かれました。

 

オリンピックに限らず、特定の分野に特化しないフリーランスの通訳者として活躍されている高畑先生の仕事内容は、普段からさまざまです。そのために、「日々アンテナを張り、勉強し続けることが大切」という言葉には説得力がありました。今回のセミナーでも事前に参加者の方々から質問をいただきましたが、中でも多かったのが「通訳者になるための勉強のコツ」について。これに対し、「実際はコツも近道もなく、とにかく毎日の積み重ねが大事。たとえば通勤・通学のとき、朝起きてから15分、就寝前の10分など、自分の生活に合わせて毎日学習し、続けること。」と回答しました。さらに、たとえばCNNを毎日観るとして、リアルタイムで観られない場合はポッドキャストで聞くなど、現代のツールを駆使した学習方法についても紹介していただき、「自分の生活に合わせた学習」の具体的な方法についても理解が深まりました。

 

 

明日の仕事が今日の続きならいいが、色々な分野の仕事があるので、今日は明日の分の勉強をしておかなければならず、毎日勉強が続いて行く。今通訳者になるための勉強を毎日続けらなければ、通訳者になってから続けることは難しい」。一見厳しい言葉のようですが、日々さまざまな仕事に携わり、オリンピックのような大舞台も影で支える姿を考えると、それほどの覚悟と努力が不可欠であることが伝わりました。

 

通訳者になる前は記者の仕事をしていた高畑先生ですが、通訳者になった今、仕事の醍醐味は「社会で起きていることと仕事が直結していること」と、「一方的に伝えるのではなく、言葉のキャッチボールの中に自分が介入していること」だそうです。通訳者になる前・なった後の厳しさと、国際社会における言語のかけ橋として活躍するやりがいを教えていただきました。

 

 

ご参加いただいた皆様、ありがとうございました嬉しい

2018年2月25日開催 中国語「翻訳者への道」アフターレポート

  • 2018.05.09 Wednesday
  • 12:10

2月25日(日)に開催された「通訳者・翻訳者への道」。第2部は、中国語翻訳者であり、サイマル・アカデミーの講師も務める眦塚技卆萓犬登壇されました。近年の中国語翻訳のマーケット事情や、学習する上で大切なこと等についてお話ししていただきました。

 

 

第2部 中国語「翻訳者への道」

 

講師:眦塚技


たかだ・ゆうこ 大学卒業後、商社勤務を経て、中国語通訳・翻訳業に従事。サイマル・アカデミー中国語翻訳者養成コースコーディネーター。桜美林大学非常勤講師、法政大学兼任講師を務める一方、実務翻訳者の後進指導・育成に注力している。

 

 

「好き嫌いなし」のスタンスが大切


来日中国人増加に伴い、ここ5年ほどはインバウンド対応が多いというお話から始まりました。ショッピングモールのパンフレットをはじめ、すでに来日したことがある「リピーター」観光客をターゲットにした、すし作り体験着物着付け体験などの日本語から中国語への翻訳で、そのジャンルは多岐に渡ります。

 

さらに、中国の市場に目を向けた企業からの依頼で、企業ホームページ契約書会社案内などの翻訳も多く見られます。また、中国語から日本語への翻訳では、中国(特に台湾)のオンラインゲームの翻訳が増加の傾向にあるそうです。

 

一方、従来から変わらないジャンルは、技術系の文書学術論文会議の資料講演原稿保険法律関係など。セミナーの第1部で、英語翻訳者は自分の強みである専門分野を身につけて仕事をしていくというお話がありましたが、中国語翻訳では比較的マーケットが小さいためか、「好き嫌いしていてはやっていけない」。どのジャンルにも対応できるようにするため、学習段階から「好奇心を持って様々な分野に挑戦する姿勢が大切」です。

 

 

学習を生活の一部にする


では、ジャンルを問わずに対応できる力は、どのように習得すればよいのでしょうか。学習する上で大切なことについて、次のことを挙げられました。

 

1)原文を速く正しく読む。

2)特に母語の語彙や表現を豊かにする。

3)時間を意識しながら学習する。

 

1)については「最も基本的で最も大切」なこと。締切がある仕事のため、限られた時間の中で高いクオリティの訳文を仕上げるには必要不可欠といえるでしょう。2)の具体的な学習方法は、「原文を漫然と読むのではなく分析しながら読む」。翻訳は「通訳と同じくらい語彙力が必要」というお話もありましたが、原文を読む段階から常に「どう訳すか」を意識することが重要なのだと感じました。そして3)については、実は「翻訳者になってからも活きる」こと。締切や訳す分量、ジャンルを見て引き受けられる仕事かどうか素早く判断するために、普段から時間を意識しながら学習することが大切だそうです。「引き受けるかどうかを判断するのは自分」という言葉から、自分の力量を把握していなければできない仕事だということが伝わりました。

 

ここで、眦沈萓犬桓身で毎日実践されている学習方法についても紹介していただきました。

まずニュースを母語である日本語で読み、その後、関連記事を中国語でも読みます。「面白い・知っておきたい」と思った記事をプリントアウトして、原文を見ながら声に出して訳していくという方法。

 

声に出して読む理由としては、「書くより速い」ことに加え、「声に出して訳すと訳せないところが明白になり、自分を誤魔化せない」から。原文を一読する時、内容について「「大体分かる」ことと「全部訳せる」ことは全く異なる」というお話がありましたが、声に出すことでその分からない部分が明らかになるそうです。

 

学習は、「普段の生活に組み込む」ことが重要とのこと。意識して「何曜日に何を何時間やる」と決めたりせず、食事や洗顔のように当たり前のことにするのがコツのようです。学習者の皆様もぜひ試してみてください!

 

セミナーの後半には、当日配布した課題を使用してミニレッスンを実施。参加者の皆様が真剣にメモを取る姿が印象的でした。ご参加いただきありがとうございました!

 


参加者の方々からいただいた質問と、それに対する眦沈萓犬らの回答をいくつかピックアップしてご紹介します見る

 

Q. 最近はインターネット上で安価に依頼できる翻訳の仕事があるため、わざわざ学校に行って勉強をしなくても自称翻訳者として仕事ができるのではと想像してしまいます。学校へ行って勉強した方が翻訳者として活躍するための近道になるのでしょうか。

 

A. 翻訳者には資格がないため、余計にそう感じてしまうのだと思います。スクールでは、どのような訳が求められ、評価されるかがすぐに分かるため、一定のレベルがあれば半年でもいいので通学することをおすすめします。また、同じ志を持った人が周りにいるということはとても心強いですし、励みにもなります。

 

Q. 中日翻訳の方が得意なのですが、中日に限定して仕事をすることは可能でしょうか。

A. 可能です。ただし、学習は中日と日中どちらもやっておく必要があります。翻訳者は翻訳だけでなくチェッカーの仕事もあり、中国語ネイティブが日本語に訳したものをチェックするのは日本人なので、そういう時に中国語の表現について判断ができないと困るからです。サイマル・アカデミーでもその状況を想定して、日本語ネイティブのクラスでは、日訳と中訳どちらも同じバランスで学習します。

 

たくさんのご質問をありがとうございました女

 

2018年2月25日開催 英語「翻訳者への道」対談 アフターレポート

  • 2018.05.09 Wednesday
  • 12:05

第1部「翻訳者への道」の最後は、パート1、パート2に登壇された成瀬先生と長島先生の対談が行われました。トピックは、産業翻訳と出版翻訳の違いや、仕事をする上での年齢制限はあるのかなど。当日の内容を一部ご紹介します。
 

パート3:成瀬先生×長島先生 対談!産業翻訳と出版翻訳の魅力

 

 

長島:まずは、産業翻訳と出版翻訳の違いについて。受講生の方によく聞かれるんですよ、「自分はどっちに向いているのか」と。この質問を受けた時、成瀬先生はどのように答えられていますか?

 

成瀬:財務諸表をよく知らないある受講生が居て、授業の3回目くらいの時に、転科を勧めたことがありました。「あなたはとても文章のセンスがあるから、こっち(産業翻訳)じゃなくて、長島先生の方(出版翻訳)に行った方が伸びますよ」って言って。後から聞いたら、彼女はその時非常に腹が立ったそうです。「捨てられた」「見限られた」と思ったらしくて(笑)。そこから、こいつを見返してやろうと思ったそうです。1年猛勉強したら、財務諸表すらすら読めるようになってましたね。「先生、二度と眼鏡違いをしてはいけませんよ」と言われました。というわけで、正直どちらに向いているかは分からないですね。

 

長島:私は、成瀬先生がパート1で仰っていたように、「やる気次第」だと思うんですよね。どちらに向いているかというより、どちらに興味を持って本気で勉強できるかを考えて選んでいただきたい。たとえば、「私は金融大嫌いです、勉強する気ありません」という人。それは私なんですけど(笑)、産業翻訳のクラスに行っても、半年しか続かないでしょう。だって興味ないんですもの。だけれども、興味を持てるようだったら本気で勉強する。それなら、今は何も知識がなくても続くと思います。

 

成瀬:両方できるっていうスーパーマンもたまにいますね。

 

長島:いますね。実際サイマルで講師をしていますから、会いに来てください。あと、勉強を始める年齢に制限はあるか、いつまで現役を続けられるか。これに関してはどう思いますか?

 

成瀬年齢は関係ないですね。スキルに関して言えば、ぐんぐん若竹みたいに伸びる人や、少しずつ伸びる人など伸び方に差はありますが、間違いなく伸びます。一番困るのは、「1年で翻訳者になれますか?」という質問。そういう人もいるし、3年かかる人もいるし、それはその人次第ですね。

 

長島:いずれにしても、勉強を始める年齢に制限はないですよね。

 

成瀬:はい。実際、定年退職してからサイマルに通学する方は多いですね。

 

長島:多いですね。「定年退職して時間ができたので、かねてから興味があった翻訳を勉強したいと思って受講しました」という方。しかも、経験豊富、知識もあるから、早い方だと1年から1年半くらいでプロになる方もいますね。いつまで現役を続けられるかについてはどうですか。

 

成瀬:私は少なくとも90歳まではやるつもりです。今63歳なんですけど、駆け出しだと思っていて、75歳くらいがピークなのかなと。まだまだ勉強することが尽きないので。

 

長島はい、頑張ってください。

 

成瀬:なんでそんなに冷たいんですか(笑)?

 

長島:定年はないと思います。気力のある限りだと思います。体力も必要だと思いますけどね。

 

成瀬:そう、体力。体力は本当に使いますね。

 

長島パート2で触れた菊池光は、亡くなる直前の85歳まで現役でした。翻訳という仕事が生きがいだからできたんだと今は思います。

 

成瀬:何歳までという発想はいらないと思います。生きてる限り現役

 

長島:同感です。先程パート1でもありましたが、翻訳業の将来についてはどうでしょう。自動翻訳やAI、今後の需要はどうなるのか。ご心配されている方も多いと思います。そのあたりはどうですか?

 

成瀬:産業翻訳に関していえば、激変期です。人工知能を使った翻訳が8割、残りの2割が人間翻訳で、それはこれからも変わらないと思います。今の翻訳事業の7~8割はなくなるんでしょうね。本当にできる人だけが残っていく

 

長島:出版翻訳でいうと、自動翻訳は全く使われていません。ですから、10年、20年は仕事があると信じています。ただ、自動翻訳もこれからどんどん良くはなっていきますよね。そのときに、自動翻訳と同等の翻訳しかできない翻訳者は淘汰されると思います。だって、安くできますから。人間にしかできない「心の翻訳」ができる人だけが残る。ただそのためには、それだけの力をつけなくてはいけない。ということで、サイマルで勉強しましょう(笑)!

 

成瀬:今の翻訳者が圧倒的に弱いのは、日本語の文章力ですね。

 

長島:英語のレベルが高い人は増えているんですよね。それに反して、特に日本語の文章力が下がっているのは、受講生の課題の訳文を見ていても時折感じますね。

 

成瀬:魅力のある良い文章を書いていただきたい。産業翻訳にとってはマストです。

 

長島:たまに、自分は文章力がないから産業翻訳をやりたいという人がいますが、それは間違いです。ノンフィクションでも産業翻訳でも、文章力は必要です。今後さらにレベルの高い翻訳が求められることを考えると、文章力を磨くというのはこれからますます重要になってくると思います。

 

成瀬:産業翻訳では、日英翻訳のニーズも高いです。英語が書けるというのはとても大事な能力で、英語がきちんと書けると、日本語もそれにひっぱられるんですね。だから日英翻訳もこれから頑張ってください。英日、日英どちらもできないと、産業翻訳の場合は生き残っていけないと思います。

 

長島:ひとつ聞きたいことがあるんだけど、翻訳をしていて、一番うれしいことは?少し明るい話題にしたいと思って。

 

成瀬:それは・・なんだろう。やってること自体ハッピーというか。長島さんも言ったけど、好きなんですよね。だから苦しくても毎日楽しいというか。

 

長島:うん。そうよね。菊池先生のこんなエピソードがあって。80歳過ぎた頃に、早川書房の編集者から「先生次はこんな本です」って新しい原書を渡されたんですけど、その時先生が、わーいわーいって手を挙げて喜んだのを見て、びっくりしました。100冊も200冊も訳してきた人が、また新しい本を受け取って、手を挙げて喜ぶなんてと思ったんですが、それほど好きだったんでしょうね。私はというと、自分の訳した作品を読んだ人が、ぞっとしたり怖がったり楽しんだり笑ったり泣いたり、そういう風にしてるかもしれないと思うと、本当に嬉しくなります。特に小説翻訳だと夢みたいなところがあって、このシーンでもしかしたら泣いてくれてるかな、と想像しながら訳すのが楽しいですね。

 

成瀬:お互い「楽しい」って言い合ってますね(笑)。

 

長島:はい(笑)。とにかく、翻訳が好きということですね。

 


将来的にますます質の高い翻訳が求められることの現実と厳しさが伺えた一方で、本人次第で生涯翻訳者として仕事をしていく力を身につけられるということと、お2人の翻訳が好きだという気持ちが伝わった対談となりました。当日お越しいただいたみなさま、ありがとうございました!

 

2018年2月25日開催 英語「翻訳者への道」アフターレポート

  • 2018.05.09 Wednesday
  • 12:00

「通訳者・翻訳者への道」セミナーが、2月25日(日)に開催されました。今回はセミナー始まって以来初の3部構成。第1部では、産業翻訳者でありサイマル・アカデミーの講師を務める成瀬由紀雄先生と、出版翻訳者であり同じく講師の長島水際先生が登壇されました。ここでは、第1部の内容を紹介していきます。

 

第1部 英語「翻訳者への道」

 

パート1:産業翻訳者への道


講師:成瀬由紀雄


○なるせ・ゆきお 商社勤務、高校の英語教師、編集業務などを経て、フリーランスの産業翻訳者に。サイマル・インターナショナル、タイムインク、大日本印刷などのクライアントを経由して官公庁、企業、大学等から多種多様な翻訳・人材教育・英文出版業務等に従事。2002年からはサイマル・アカデミー産業翻訳者養成コース講師。

 

 

やる気次第で道は開ける


成瀬先生が講師を務める翻訳者養成コースの最大の目標は、「生涯を通じて翻訳の仕事ができる翻訳力を獲得すること」。翻訳エージェンシーに登録することが最終的なゴールではありません。そのため、登録したその日から仕事ができるようなプログラムを提供しています。例として、一つの英文からいくつもの訳文を考えるトレーニングが挙げられました。訳文の選択肢を広げることで、「価値の高い」訳文を生む可能性を高めることが目的です。修了生の中には、翻訳者としてデビュー後、翻訳力の基礎を磨くために再び受講している方も。「学習」と「実践」を意欲的に往復することで、翻訳者になった後も翻訳力を伸ばし続けることができます。

 

また、多くの方が懸念する、今後の機械翻訳による影響についてのお話もありました。先生は、「機械翻訳を利用した大量処理案件」と「人間の手による高度な案件」に分かれていくと予想。特に前者は「翻訳市場の大半を占めることになるのでは」と予測しています。しかし、人工知能の発達によって「言語情報処理としての翻訳」、すなわち英文和訳が編集されたような翻訳が増加したとしても、その文章の本質を捉えた「心と心をつなぐ翻訳」は人間にしかできません。「人間の心を人間に伝えることができるのは人間だけ」という言葉には、深く納得させられました。

 

機械翻訳の影響に限らず、他にも年齢や経験、専門的な知識がないこと等を気にして、翻訳者になることを思いとどまる方は多いのではないでしょうか。しかし、これまで先生が受け持ってきた受講生は、70歳を超える方文学部出身で財務諸表という言葉も知らなかった方主婦や子育て中の方など実にさまざま。いずれも猛勉強の末に翻訳者になった方々ですが、少なくとも翻訳者への道の入り口は、年齢も知識量も経歴も関係ありません。本人のやる気次第で道は開けるということを教えていただきました。

 

 

 

 

 

パート2:出版翻訳者への道


講師:長島水際


○ながしま・みぎわ サイマル・アカデミーを卒業後、サスペンス、ミステリーを中心に翻訳を行なっている。サイマル・アカデミー翻訳者養成コース出版翻訳講師。訳書:コーディ・マクファディン「暗闇」、「戦慄」、「傷痕」、ノーラ・ロバーツ「真昼の復讐者」他多数。

 

 

翻訳との出会いと翻訳者への道


長島先生はサイマル・アカデミー修了生。翻訳者になる前は、大学などで英語の講師をしていました。職場の同僚に誘われてサイマル・アカデミーに通学し始めましたが、その時はまだ翻訳者をめざしていたわけではなく、「勉強してみようかな」という気軽な気持ちだったそうです。

 

そんな中、クラスで最初の課題が出されました。アメリカの投資銀行のエコノミストについて書かれたノンフィクションの翻訳で、先生の苦手な分野でした。あまりリサーチをすることなく提出し、添削付きで返却された「誤訳だらけ」の自分の原稿と、高評価だったクラスメイトの原稿を見比べて「唖然とした」と言います。英語が得意だと思っていたのは勘違いだったということに、その時気づいたそうです。

 

その後、「クラスで1〜3番くらいの成績になれるまでは頑張ろう」と一念発起。平日は仕事、休日はアカデミーという忙しい日々を3年半送り、ついに小説の翻訳をする話を、当時の講師である菊池光先生から持ちかけられました。その時手がけた本のジャンルは、数年前から好んで読んでいたという「ドロドロ・おぞましい系のロマンス」。430ページほどの分量を、半年近くかけて訳しあげました。やがてその本が出版された時の喜びは今でも覚えていて、「書店を3〜4軒回って訳書が平積みされているのを見に行った」そうです。

 

プロになるまでの、仕事をしながら学習を続けた3年半について、「大変ではあったが、勉強していくにつれて読解力や表現力が少しずつ伸びていることが分かった。それと、サイマルに通学して学習することが生活の一部になっていた」と振り返りました。だから続けることができたのだそうです。最後に、ゼロから翻訳者への道を進んだ先生は、「経験や知識は、最初はなくても大丈夫。でも、最初の一歩を踏み出さなければ何も始まらない。」という言葉で締めくくり、学習を始めようか迷っている方の背中を押しました。

 

 

 

 


セミナー後に取った参加者のアンケートでは、「学習に対する姿勢の大切さに気づかされた」という声が多く見られました。年齢や経歴、そして今後の重要など、不安に思うことはあるかもしれませんが、「最初の一歩を踏み出さなければ何も始まらない」ということと、「やる気次第」で力をつけていくことで、その不安要素を取り除けるということが参加者の方々に届いた回となりました。

 

パート1とパート2をそれぞれお送りしましたが、最後のパート3はお二人の対談です!

その模様は次の記事にてご紹介しています。ぜひそちらもご覧ください。

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